学校法人北海道シュタイナー学園 いずみの学校 隔週発行の教職員だよりです!


by bridge-since2008

~ 動物の母子 ~

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ただいま4・5年生は動物学の真っ最中。この地球にはさまざまな動物が生きていますが、そのどれもが特定の環境に適した、特別な体を持っています。鋭い爪やしっぽ、牙、強い前足や後ろ脚、そのどれもが生命と種を維持するために使われています。一方人間には動物たちのような専門性はないけれど、二本足で立ち、両手両腕を自由に使うことができるお陰で、無限の創造性と他者を助ける可能性が開かれています。足でできることと手でできること、数え上げたらその数の違いに驚かれることでしょう。子どもたち曰く「黒板がいっぱいになっちゃうよ~」(足でできることにも「字を書く」という意見が出るのはこの学校らしいなぁと苦笑してしまいました。確かに全身の器用さが後の思考力の基盤になるので、そうした練習をすることもあります)。
さて子どもたちはこれまでにエゾリス、ヒグマ、キタキツネと北海道に住む動物を学んできました。子どもたちはエゾリスの一生伸び続ける門歯に驚き(その硬い歯で他の動物の骨を食べることもあるのです)、ヒグマが強い前足と鋭い爪で木の皮にマーキングする姿に痺れ、キタキツネが息を潜めて素晴らしい鼻と耳と犬歯でネズミをしとめる様子に息を飲んでいました。そしてもう一つ、お話を聞いた翌日にまず子ども達が思い出すのが、それぞれの動物の母と子の姿でした。メスだけで7匹もの子どもを育て、子どもの成長に合わせて何度も巣穴を引っ越すエゾリス(1匹ずつ咥えて運びます)。冬ごもり中の百日間、飲まず食わずで子どもにおっぱいをあげ、2~3年かけて育て上げるヒグマ。子どもが狩りが出来るようになると、わが子を本気で噛んで巣から追い出し、子どもを自立させるキタキツネ。子どもたちは「メスはえらい、オスはひどい(だいたい子育て中不在なので…)」などと言いながら、それぞれの親が子どもに危険を知らせる鳴き声まで、一度聞いただけで細かく思い出していました。
9歳の危機を越えてゆく4年生からの学びのテーマは、一度は切り離された世界と自分との関係を、自分から新たに再構築していくこと。子どもたちは、動物の親子の姿を通して、まるで自分を守り育ててきた母なるものを川の此岸から見つめているかのようでした。別のものになるからこそ、相手を見つめ、またその偉大さも認めることができるようになるのです。そしてその偉大さを味わったら、今度はそこからの自立という長い旅路が始まります。動物学の時間には何度も静寂が訪れましたが、キタキツネの自立の場面での静寂は、まるで別の音が聞こえてくるかのような、ひときわの静けさでした。
つい最近の保護者会や家庭訪問でよく聞かれたのが、子どもたちが「今年になってよく授業や学校のことを話すようになった」という言葉。「話すこと」は「離すこと」。話すようになったということは、体験とどっぷり一体という時期を終えて、少しずつ体験を自分から切り離して対象化し、客観的に見つめる意識が芽生えてきたということです。動物学での彼らの様子とあわせて、確かにそれぞれの子がルビコン川を越えて、新しい意識のあり方へと変容を遂げていっているということを、強く感じる出来事でした。

足利 智子
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by bridge-since2008 | 2009-06-24 11:05