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学校法人北海道シュタイナー学園 いずみの学校 隔週発行の教職員だよりです!


by bridge-since2008

5年生クラス

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「先生、わたしを動物に例えると何ですか?」「うーん…。カンガルー」
「わたしは?」「ヤギ」
「○○くんは?」「ハリネズミ」
 その子を思い浮かべてパッとひらめいた動物を答えているとクラスの子ども達は笑ったり感心したりで、大騒ぎです。結局、全員を動物に例えました。子ども達は、このことが大変面白かったらしく、その後も「全員を野菜に例えてください。」「全員をお菓子に例えてください。」といった要望が続きました。
 私は「○○ちゃんは?」と子ども達が名前を挙げるたびに即座に答えることを意識しました。深く考えるよりもインスピレーションを働かせている方が「言い得て妙!」といった答えが出てきて面白く、盛り上がりました。回を重ねているうちに子ども達から私が特訓を受けている様な気分になりました(頭のある部分をクリアにしておかないと次々と浮かばないのです)が、この例えればシリーズは一学期中しばらく続きました。子ども達は概念化することを求め、学んでいたようにも感じました。そして、同じ頃、子ども達は自分が大人からどう見えるのか、どのような子どもだと思われているのかを知りたがり、担任や専科の先生達に形を変えて何度も何度も質問を繰り返していました。時には順位付けも盛んでした。担任の呼びかけや注意から「先生、このクラスで一番うるさいのは誰ですか?」「忘れ物を一番するのは?」「面白いのは?」「その順番に名前を言ってください。」もう、それは何から何まで…。
 二学期になると子ども達はお互いのことをより盛んに言い合うようになりました。「○○ちゃんは、この頃だいぶん話すようになったね。3年生の時は静かだったのに。」「△△ちゃんは話し方がお母さんにそっくりだ。」「□□が先生に話しかける時、甘えた声になるよね。」
 時には攻撃的に思える表現も出てきますが、クラスの中で緩やかに着地することができるようになりました。例えば「◇◇は変だよ。何でそんなことするの?」「そうだよね。」「でも、そんなこと言ったらみんな変じゃない?」「うん。普通の人なんてこのクラスにはいないね。」一同爆笑、といった感じです。3年生後半から友達のことをあれこれと表現し、その口調は断定的できついものも多かったのですが、今は表現に少しずつユーモアが加わり、お互いの在り様を認め合ってきているようにも感じます。
 客観性がより育ち、周りと区別された自分についての意識が高まってきた5年生ですが、その自意識が過剰になりすぎずにいられることが素晴らしいなと思います。それは、短い劇を演じる子ども達の姿から感じました。
 一学期にコンロー先生から英語の本を渡された子ども達はその内容にすぐに夢中になりました。しばらくすると休み時間にそのお話をクラス全員で自主的に演じ始めました。自分達で役を割り振り、小道具を用意して楽しそうにしていましたが、熱が入るあまり子ども達だけでは、途中で上手くいかなくなりました。そこで、英語の授業に取り入れてもらい、集会で発表することにしました。皆が見ているその場所でも子ども達は演じることを楽しみました。ブタの役で鼻をブヒブヒ鳴らすことも真剣で、照れたり恥ずかしがることはありませんでした。どうすれば良いものになるかに皆が頭を働かせ、なりきることが子ども達自身にとって重要でした。
 変なことを言ったら笑われる(これは、人を笑わせることが何より!面白いことが一番だとする大阪育ちの担任の元では大丈夫でしょうか!?)、わからないことがあるとばかにされる(わからないことは、あって当たり前!だから学校に来ているのだ。)、そんな雰囲気があると子ども達は学ぶことを心から楽しめなくなります。
5年生のクラスは9名のうち、7名が転入生です。年度ごと学期ごとに変わっていくクラスの様子に子ども達は、攻撃的で落ち着かない時期もありました。けれど、子ども時代の黄金期と言われる5年生のこの時期を迎え、子ども達は活き活きと今を楽しみ、教師を心から尊敬、信頼しています。
 こういった時代を子ども自身がしっかりと堪能することができれば、その経験が大きな力となるでしょう。そして、これからやってくる怒涛の思春期に親や教師を壁として乗り越えていくことができ、輝かしい一個の人間になれるのだろうと思います。そこに対する信頼が私の中に満ちています。(石尾)
by bridge-since2008 | 2013-10-09 10:15 | 教師より